メタボリックシンドローム

近頃当たり前のように使われている言葉に「メタボ」がありますね。「メタボ」といえば太っている人の代名詞のように使われ、健康に気を遣ってらっしゃる方はメタボにならないようにと努力されているかと思います。

さて皆さんが当たり前のように使っている言葉、「メタボ」ことメタボリックシンドロームですが、その「正式な診断基準」やこれまたよく使われている「生活習慣病」との違いを理解されてますか?これがいかに健康に深刻な被害を与えているかをご存じですか?

また今、健康によいということで世間では「水素」が流行っていますよね。メタボリックシンドロームにも有用であることはご存知の方が多いのではないかと思います。では何故、メタボリックシンドロームの予防・改善に「水素」が有用なのでしょうか?

メタボリックシンドロームのことも「水素」のこともきちんと理解した上で、正しく予防・改善に取り組んで明るい明日を作って下さい。

メタボリックシンドロームとはどんな病気

「内蔵肥満」に高血圧・高血糖・脂質代謝異常が組み合わさり、心臓病や脳卒中などの動脈硬化性疾患をまねきやすい病態です。単に腹囲が大きいだけではメタボリックシンドロームにはあてはまりません。

ー厚生労働省よりー

わかりやすく簡潔に書いてありますが、少し言葉が足りないでしょうか。けれどもメタボリックシンドロームというと「=肥満」と考えがちですが、少し違うということはこれでわかると思います。「肥満」の中でも特に「内臓肥満」、これに加えて・脂質代謝異常・高血圧・高血糖のうち2つに相当した場合をメタボリックシンドロームと診断します。よく会社の健康診断で行われる腹囲を測る診断だけでは、正確な診断は出来ません。高血圧は機械で、脂質代謝異常と高血糖は「血液検査」で簡単に調べることが出来ます。

メタボリックシンドロームの考え方

「生活習慣病」とは糖尿病・脂質異常症・高血圧・高尿酸血病など、生活習慣が深く関与していると考えられる疾患の総称です。日本ではかつて、加齢によって発病されると考えられていたため、これは「成人病」と呼ばれていました。今では懐かしい言葉ですね。けれども研究で徐々に生活習慣が深く関与していることが判明してきたため、1997年頃から予防出来るという認識を持たせることを目的として「生活習慣病」と呼び名を変えました。「生活習慣病」はあくまでそれを元に起こりうる病態を総称した通称です。この中で特に、高血圧・高血糖・脂質代謝異常といった疾患2つ以上と「内蔵型肥満」が複合する状態を、医学的にメタボリックシンドロームと称します。この言葉は正式な病名なんですね。

「メタボリックシンドローム」の「診断」

何故今、メタボリックシンドロームが注目されているのか

2007年の厚生労働省の調査で、日本で策定されたメタボリックシンドロームの基準を満たした者、もしくはそれに近い数値を持った者を総計すると、実に男性の2人に1人女性の5人に1人メタボリックシンドローム及びその予備軍であることがわかりました。

日本における「メタボリックシンドローム」の「割合」

この数字自体にはいろいろ問題があるのですが、それは後述します。それでも現在、これだけたくさんの方が健康危機にあるという大変な事実が発覚しました。「メタボ」という言葉が流行り始めたのもこの頃からですね。

メタボリックシンドロームの診断基準

厚生労働省の定めたメタボリックシンドロームの診断基準

ウエスト腹囲径(内臓肥満)に、脂質異常・血圧・血糖のいずれか2つ以上が定めた基準値より高い場合、メタボリックシンドロームと診断されます。

<ウエスト周囲径(腹囲)>
男性≧85cm
女性≧90cm
内臓脂肪面積 男女とも≧100c㎡に相当
この「相当」というのは腹囲が男性だと85cmない方でも、メタボリックシンドロームの可能性があるということです。MRIで検査するとご自分の内臓脂肪の面積がはっきりとわかります。つまり この基準内だから絶対大丈夫ということではないのです。
<脂質異常症(高脂血症)>
男女とも:
高トリグリセライド(TG)血症(中性脂肪)≧150mg/dl
低HDLコレステロール(HDL-C)値血症<40mg/dl
<血圧>
収縮期血圧≧130㎜Hg
拡張期血圧≧80mmHg
<血糖>
空腹時血糖≧110mg/dl

※高TG血症、低HDL-C血症、高血圧、糖尿病に対する薬物治療を受けている場合は、それぞれの項目に含めます。

肥満には2種類ある

肥満とひとことで言っても種類があります。だからこそ、ここではより正確に「内臓肥満」という言葉を使っています。

<内臓脂肪型肥満>
内臓の周りに脂肪が溜まる肥満。おなかがぽっこり出た体型から「りんご型肥満」とも呼ばれます。内臓周囲の脂肪は比較的溜まりやすいですが、運動をしたり、食事を適正にしたりと日常生活に気をつけていれば、減りやすいといわれています。
<皮下脂肪型肥満>
腰回りやお尻、ふとももなどの下半身を中心に脂肪が溜まる肥満。「洋なし型肥満」と呼ばれます。

日本基準と世界基準

日本と世界ではメタボリックシンドロームの基準が違うことをご存じですか?日本のメタボリックシンドロームの基準は世界とは異なり、男性に厳しく女性に甘く策定されています。だからこそ男性の2人に1人がメタボリックシンドローム及びその予備軍という結果が出るという背景があります。つまり女性は現状ではメタボリックシンドロームに該当しなくても気を付けなくてはいけないということですね。

<ウエスト周囲径(腹囲):日本基準>
男性≧85cm
女性≧90cm
<ウエスト周囲径(腹囲):世界基準>
男性≧102cm
女性≧88cm

メタボリックシンドロームの診断基準が策定されるまで

メタボリックシンドロームの診断基準は、1998年にWHO(世界保健機構)から、2001年にNCEP(全米コレステロール教育プログラム)から、心血管疾患発症に対する複合リスクとして発表されました。WHOは腹部肥満を含むリスク5項目のうち3項目以上を満たした場合、NCEPはインスリン抵抗性を必須項目とし、加えてリスク5項目のうち2項目以上を満たしている場合というものです。

これらを踏まえ、腹部肥満を必須項目としたメタボリックシンドロームの診断基準が2005年4月にベルリンで開催されたIDF(国際糖尿病連合)会議で発表されました。同月、日本でも生活習慣や人種により構成要因の頻度などが異なることから、日本独自の診断基準が必要であるとして、関連8学会によるメタボリックシンドローム診断基準検討委員会が診断基準を策定しました。

揺らぐ診断基準と変わらない危険度

厚生労働省研究班(主任研究者=門脇孝・東京大学教授)は全国12か所の40~74歳の男女約3万1000人について、心筋梗塞、脳梗塞の発症と腹囲との関連を調べ、その結果、腹囲が大きくなるほど発症の危険性は増加することはわかりましたが、特定の腹囲を超えると危険性が急激に高まるという線引きは困難であるとしました。

同研究班は昨年、腹囲が男性85センチ、女性80センチを超えると血糖や脂質などの検査データの異常が急激に増えるということを明らかにしましたが、今回の発症との関連では腹囲基準の妥当性は導き出せませんでした。ただ、今回の研究でも肥満の人ほど発症しやすい傾向は変わりないとのこと。現行の基準でメタボと診断された人は、そうでない人に比べて発症の危険性は男性で1.44倍、女性で1.53倍高かったそうです。

門脇教授は「腹囲が大きくなるほど心臓病や脳卒中を起こす危険は男女とも高くなったが、基準値としてどの数値が明確なのかを示すことは難しかった。今回の研究結果をもとに今後、最適な腹囲の基準について議論をしていく必要がある」と話しています。

メタボリックシンドロームの診断基準「ウエスト周径囲(腹囲)」については、今後の研究次第で変わる可能性が高いということです。

メタボリックシンドロームの現状

現在、日本社会は急速な高齢化に伴い、疾病全体に占める、がん、心疾患、脳血管疾患、糖尿病などの生活習慣病の割合が増加しています。国全体の医療費の三分の一が生活習慣病に使われています。また死亡原因でも生活習慣病が6割を占めているのが現状です。

「生活習慣病」の「医療費」

年間の医療費の約3分の1が生活習慣病が元になっている病気に費やされているという統計があります。

「生活習慣病」の「医療費」

日本人の「死亡原因」

日本人の死亡原因の第三位までが「生活習慣が元になる病気」です。現代の生活習慣はこれほど危険に満ちているのです。

日本人の「死亡原因」

特定健診制度、受けましたか?

2008年4月より厚生労働省の新しい取り組みとして、特定健康診査制度が始まりました。これは40歳ー74歳の方全員が対象の大規模な生活習慣病の「一次予防」で、世界に例のない先駆的な取り組みです。現在の特定健診はメタボリックシンドロームに着目し、問診・身長体重測定・血圧測定・血液検査・尿検査にウエスト周径囲を加えることでこれらの病気のリスクの有無を検査し、リスクのある方の生活習慣を望ましいものに変えていくための保健指導することを目的とした健康診査です。これまでの健診では「要精検」「要治療」などとされると精密検査や治療を受けることをすすめられました。特定健診でもその枠組みは変わりませんが、メタボリックシンドロームに特化した対策として、受診者は3段階に振り分けられ、メタボリックシンドロームの人には「積極的支援」、その予備軍には「動機づけ支援」、さらにリスクの少ないすべての受信者に「情報提供」が行われます。これがうまく機能すれば医療費を抑え死亡率を下げることに繋がります。

メタボリックシンドロームは病気の温床

メタボリックシンドロームはひとことでいうならば、様々な病気の温床です。メタボリックシンドロームになると身体の中でどんなことが起きているのか、説明したいと思います。

肥満

摂取エネルギーが消費エネルギーを上回り、体脂肪が過剰になる状態が肥満です。 肥満の程度を示す指標として「BMI」があります。 BMI=体重(kg)÷(身長(m)×身長(m) 簡単に計算出来るサイトもたくさんありますから、ぜひご自分の肥満度をチェックしておきましょう。日本肥満学会の基準では、19.8~24.2は「正常範囲」、24.2~26.4は「過多体重」、26.4以上は「肥満」です。 但し、ここで問題にしている「内臓肥満」はかくれ肥満とも呼ばれ、BMI数値や見た目、あるいはウエスト腹囲径を測ってもわからないことがあります。腹部をCT検査して脂肪が100cm2以上あると内臓肥満と判定されます。気になる方は一度CT検査をされてみるといいかもしれません。肥満は様々な病気に繋がります。自分では改善が難しいと感じたら、近くの医療機関に相談するのもひとつの手です。

沈黙の臓器

肝臓に脂肪が溜まりすぎた状態を脂肪肝といいます。脂肪肝の半数以上はBMIが25未満のかくれ肥満といわれています。脂肪肝を放置すると、肝臓の機能が低下し、慢性肝炎となり、やがて脂肪性肝硬変や肝がんといった、重大な病気へと進行してしまうこともあります。肝臓は「沈黙の臓器」とも呼ばれ、自覚症状があらわれにくいので注意が必要です。

高血圧

高血圧は近年の欧米風のライフスタイルへの変化と生活習慣の乱れ(飲酒・喫煙・偏った食生活)が主な原因とされています。高血圧には2種類あり、二次性高血圧は腎臓、心臓、血管、内分泌系の異常が原因として考えられます。原因となっている病気をきちんと治療すれば、自然と血圧も下がります。次に本態性高血圧ですが、これは原因のはっきりしない高血圧の総称です。日本人の場合、圧倒的にこちらの数が多く、80~90%に昇ります。もともと高血圧になる遺伝子的訴因がある人に、塩分の多い食事や飲酒、ストレス、運動不足などの環境因子が影響して高血圧になることがわかっています。

高血圧についてはこちらをご覧ください。

高血圧は動脈硬化の原因となります。「動脈硬化」とは「動脈の壁が厚くなったり、硬くなったりして本来の構造が壊れ、働きが悪くなる病変」の総称です。つまり動脈が硬くなると、その特性であるところの「とてもしなやかな強さと弾力性」が失われ、また内膜が厚くなることで血管の幅が狭まり、心臓が血液をうまく送り出すことが出来なくなり、血管や身体に負担がかかります。それによって様々な病気が引き起こされるのです。

動脈硬化についてはこちらをご覧下さい。

心筋梗塞

日本人の死亡原因の第2位が心臓の病気なのですが、その多くが心筋梗塞と心筋梗塞からおきる心臓の病気です。心筋梗塞は発病が直接命に関わる非常に怖い病気です。血管内に出来たプラークが破れてそこに血栓ができ、冠動脈が完全に詰まって、心筋に血液が行かなくなった状態を「心筋梗塞」と呼びます。 心筋梗塞についてはこちらをご覧下さい。

脳梗塞

日本人の死亡原因第3位となっている脳血管性疾患の中で特に多いものが「脳卒中」です。脳卒中は近年増加していて、現在年間25万人以上の人が発症しています。 「脳卒中」とは脳の病気の総称です。急激に症状が発症したものをとくに「脳卒中」と呼びます。この中で「血管が狭窄したり詰まったりして起こるもの」を「虚血性脳血管障害」といい、この虚血性脳血管障害には「脳梗塞」と「一過性脳虚血発作(TIA)」があります。他に有名な脳の病気として「脳内出血」や「くも膜下出血」などがありますね。

脳卒中の60%以上を占めるのが「脳梗塞」で、脳の病気では一番起こる可能性が高い病気です。脳梗塞は「脳の血管が極度に狭くなったり詰まったりしてしまうことで、脳に酸素や栄養が行き渡らなくなり、脳の細胞が部分的に壊死してしまう病気」です。大変死亡率が高い上に、幸いにして一命を取り留めたとしても麻痺などの後遺症が残る可能性が高いという、とても怖い病気です。

脳梗塞についてはこちらをご覧下さい。

糖尿病

厚生労働省が行った「平成25年国民健康・栄養調査」によると、成人(20歳以上)のうち糖尿病が強く疑われる人は約950万人糖尿病の可能性が否定できない人は約1,100万人に上ると推定されています。

糖尿病とは、「高血糖」の状態が慢性的に続く病気のことです。「高血糖」とは血液中にブドウ糖が増えすぎた状態のことで、糖質を食物などで取り過ぎると起こります。現代の食生活では「糖質」を摂る機会が大変多いですね。この「高血糖」を解消する働きをするホルモンがすい臓の作り出す「インスリン」です。「インスリン」は血糖値を下げる役目を果たします。つまり「インスリン」が不足したり働きが悪くなることで、「高血糖」の状態が起こるのですね。

糖尿病についてはこちらをご覧下さい。

脂質代謝異常(高脂血症)

高脂血症はLDLコレステロール140mgdl以上、中性脂肪150mgdl以上、HDLコレステロール40mgdl未満のいずれかを満たすものと定義されます。以前は総コレステロールが220mgdl以上という基準が含まれていましたが、2007年日本動脈硬化学会から出たガイドラインから総コレステロールの基準は削除されました。また、高脂血症の名称も脂質異常症と変更されました。

脂質代謝異常の基準であるLDLコレステロールは悪玉コレステロール、HDLコレステロールは善玉コレステロールと一般的に呼び分けます。LDLコレステロールが上がりHDLコレステロールは下がるほど「動脈硬化」が起こりやすいとされています。中性脂肪に関しても「動脈硬化」「燈明病」との関連性が指摘されています。

脂質代謝異常自体は自覚症状がなく、検診によってわかるケースがほとんどです。脂質代謝異常は「動脈硬化」を促進させる危険な因子であり、これにより心筋梗塞・脳梗塞になり命に危険をもたらす可能性があります。

動脈硬化についてはこちらをご覧下さい。

心筋梗塞・脳梗塞についてはこちらをご覧下さい。

病気になる危険性の高さ

メタボリックシンドロームの基準である肥満、高血圧、高血糖、脂質代謝異常のいずれも持たない方に対して、メタボリックシンドロームの基準に2つ該当する方はその危険性が5倍、3~4つ該当する方は危険性が31倍になるという研究結果があります。

「心筋梗塞」になる「危険性」

メタボリックシンドロームの研究最先端

脂肪細胞の「慢性炎症反応」

メタボリックシンドロームの基盤として、近年、肥満の脂肪組織そのものが炎症性変化を起こしていることが明らかになりました。炎症反応は生体防御機能のひとつでなくてはならないものですが、不必要あるいは過剰な炎症反応は身体に害を及ぼしますくすぶったような非常に低いレベルの炎症状態の持続は肥満や動脈硬化だけではなく、がんやアルツハイマー病など様々な疾患の発症誘因や病態進展に関わる基盤と考えられています。炎症反応の起こるメカニズムはまだ完全に解明されていませんが、脂肪細胞由来の遊離脂肪酸とマクロファージ由来の炎症関連分子が脂肪細胞の肥大化により、アディポサイトカインを生産し調節する機能が十分に働かず、肥満の慢性炎症を促進すると考えられています。現在、炎症反応はサイトカインによって調整出来ることがマウス実験でわかっていて、これは人にも有効であるという結果が出ていますが、まだ研究段階です。

※アディポサイトカイン

アディポサイトカインは脂肪細胞から分泌されます。アディポサイトカインにはインスリン抵抗性や動脈硬化の発症・進展を防ぐ働きがある「善玉アディポサイトカイン」と、これらを悪くする「悪玉アディポサイトカイン」があります。健康な状態ではこの二つはバランスが取れていますが、内臓脂肪が増えてくると「悪玉アディポサイトカイン」が過剰に生産されるようになり、インスリン抵抗性が引き起こされるようになります。

※インスリン抵抗性

「インスリン抵抗性」とは肝臓や筋肉、脂肪細胞などでインスリンが正常に働かなくなった状態のことをいいます。インスリン抵抗性があると、食事で高くなった血糖値を感知してすい臓からインスリンが分泌されても、筋肉や肝臓が血液中のブドウ糖を取り込まないため、血糖値が下がらず、糖尿病の発病に繋がります。

遊離脂肪酸の働き

脂肪細胞に過剰に蓄えられた中性脂肪は、遊離脂肪酸というかたちで血中に流れ出ます。この遊離脂肪酸が増えるとインスリン抵抗性が引き起こされることがわかっています。また血中の遊離脂肪酸は肝臓に運ばれ脂肪肝の原因ともなります。

「慢性炎症」の怖さ

「酸化ストレス」の増加

アディポサイトカインの異常には、脂肪細胞肥大化に伴う「酸化ストレス」が関係していると考えられています。「酸化ストレス」は「活性酸素」の増加により引き起こされます。「活性酸素」の中でも特に毒性の高いものを「悪玉活性酸素」と呼んで区別します。「活性酸素」という言葉は今、身体に害があるものとして、メジャーになりつつある言葉です。けれども「活性酸素」は身体に害を及ぼすと同時に身体を守ってくれてもいるのです。

活性酸素とは?

私たちは、呼吸により1日に500ℓ以上の酸素を体内に取り入れています。その酸素を使って、食事で摂った栄養素を燃やしエネルギーを作り出していますが、この過程で取り入れた「酸素の約2%分」が「強い酸化作用を持つ活性酸素」に変わるといわれています。

また食事から摂ったエネルギーも「活性酸素」へと変わります。

もともと「活性酸素」は身体によいものだと考えられてきました。

その強い攻撃力で体内に侵入したウイルスや細菌を退治するという大切な役割があるのです。白血球の一部が「活性酸素」の力を利用して体内に侵入してきた細菌を破壊してくれる、いわゆる「免疫力」を作り出してくれるのです。

けれどもその後「活性酸素」の研究が進み、「活性酸素」には種類があることや、「活性酸素」が増えすぎてしまうと細菌だけではなく自分の身体の細胞も傷つけてしまったり、身体を酸化させてしまうという害があることがわかりました。

「酸素」はあらゆるものを「酸化させる力」を持ちます。

ナイフで切ったりんごの断面が徐々に茶色くなっていく、これが酸化の力です。

この「酸化」は人間の身体にももちろん作用します。その最もわかりやすい例が「酸化現象」=「老化現象」です。これは体内の「活性酸素」が細胞をサビつかせ、機能を衰えさせるために起きる現象です。

この酸化作用のことを「酸化ストレス」と言います。

切ったリンゴを変色させる「酸化現象」の仕組み

「活性酸素」とは何か

私たちは、呼吸により1日に500ℓ以上の酸素を体内に取り入れています。その酸素を使って、食事で摂った糖分や栄養素を燃やしエネルギーを作り出していますが、この過程で取り入れた「酸素の約2%分」が「強い酸化作用を持つ活性酸素」に変わるといわれています。

もともと「活性酸素」は身体によいものだと考えられてきました。その強い攻撃力で体内に侵入したウイルスや細菌を退治するという大切な役割があるからです。白血球の一部が「活性酸素」の力を利用して、体内に侵入してきた最近を破壊してくれる、いわゆる「免疫力」を作り出してくれる存在なのです。

けれどもその後「活性酸素」の研究が進み、「活性酸素」には種類があることや、「活性酸素」が増えすぎてしまうと細菌だけではなく、自分の身体の細胞も傷つけてしまったり、身体を酸化させてしまうという害があることがわかりました。

「活性酸素」の「酸素」。

「酸素」はあらゆるものを「酸化させる力」を持ちます。

ナイフで切ったりんごの断面が徐々に茶色くなっていく、これが「酸化の力」です。

この「酸化」は人間の身体にももちろん作用します。その最もわかりやすい例が「酸化現象」=「老化現象」です。これは体内の「活性酸素」が細胞をサビつかせ、機能を衰えさせるために起きる現象です。

切ったリンゴを変色させる「酸化現象」の仕組み

「活性酸素」の種類

「活性酸素」には種類があると申し上げました。

体内で発生する「活性酸素」には「善玉活性酸素」と「悪玉活性酸素」があり、それが以下の4種類に分かれます。この中で遺伝子や細胞を傷つける「ヒドロキシルラジカル」を特に「悪玉活性酸素」と一般的に呼び、区別しています。傷ついた身体を修復するために生まれる「善玉活性酸素」から、身体を傷つける「悪玉活性酸素」が生まれるというジレンマがあることがわかります。

<スーパーオキシド:善玉活性酸素>

この活性酸素はミトコンドリア細胞が酸素からエネルギーを作るときに生成されるので、私たちが呼吸をしている限りこの活性酸素の発生は避けて通れません。またウイルスや異物などが体内に侵入した際に、白血球により一番初めに大量に放出され異物を撃退する作用があります。そんな善玉作用のあるスーパーオキシドですが、異物を撃退するということからもわかる通り「毒性」が高く、放っておくと体内を傷つけてしまいます。

<過酸化水素:善玉活性酸素>

スーパーオキシドが体内の抗酸化酵素であるSOD(スーパーオキシドディスムターゼ)によって分解される過程で酸素とともに生成されるのが「過酸化水素」です。体内の細菌を殺してくれる善玉作用が期待できます。傷口の消毒用の薬品に「オキシフル」がありますが、これは「過酸化水素水」を3%の溶液にしたもので「活性酸素の毒性」をうまく利用したものです。大半が体内の抗酸化酵素で無害化され水になりますが、極めて不安定な性格と「非常に強い毒性」を持ちます。

<ヒドロキシルラジカル:悪玉活性酸素>

スーパーオキシドから生じた過酸化水素が体内の鉄や銅などの金属イオンと反応して生成する、最も酸化力が強く毒性が高い活性酸素が「ヒドロキシルラジカル」です。スーパーオキシドの数十倍の攻撃性を持つ凶悪な活性酸素で、善玉作用はなく、遺伝子や細胞膜を傷つけます。反応性がとても高く、発生しては消えるということを100万分1秒という単位で繰り返し、糖質やタンパク質、脂質などと反応し「過酸化脂質」を蓄積させていきます。じわじわと身体を蝕んでいく存在で、困ったことにヒドロキシルラジカルを分解する酵素は体内には存在しないのです。

<一重項酸素:悪玉活性酸素>

悪質な性格をした反応性が強い活性酸素です。放射線や紫外線などの光の刺激により、皮膚や目に大量発生し、皮膚を形成するタンパク質や脂肪を酸化、変質させてしまいます。皮膚がん等を引き起こす非常に怖い活性酸素であり、肌の大敵です。

 「悪玉活性酸素(ヒドロキシルラジカル)」の発生過程

身体の中で「悪玉活性酸素(ヒドロキシルラジカル)」の発生する過程についてお話します。 「悪玉活性酸素(ヒドロキシルラジカル)」が発生するまでには4つの過程を踏みます。 身体がいかに「悪玉活性酸素(ヒドロキシルラジカル)」を作らないようにしているかがおわかりになるかと思います。それほど毒性の高い物質なのです。

酸素・水素・電子の例
  • 酸素[O2]
  • 私たちは呼吸をすることで酸素を体内に取り込みます。一般的な酸素分子は、酸素原子が2個結びついて1個の酸素分子として存在しています。

  • 矢印
  • スーパーオキシド[O2-]
  • 傷ついた細胞を修復したとき、その副産物として生まれるのが「スーパーオキシド」です。細胞の修復のために、酸素が電子1個を余分に取り込むのですね。するとその結合した分子は不安定になり、強烈な酸化力を示します。これが活性酸素「スーパーオキシド」の発生過程です。これを体内に存在する「SOD」で分解します。SODとは「Super Oxide Dismutase」の略で、その名が示すように「スーパーオキシド」を分解する酵素のことです。SODはスーパーオキシドが「過酸化水素」に変化する還元反応を促進する触媒として働きます。他の物質から奪った電子が酸素分子に入り込んで、一個の不対電子を持っているのが特徴です。

    ※還元反応とは「水素が加わった反応」のことです。

  • 矢印
  • 過酸化水素[H2O2]
  • スーパーオキシドをSODが分解する(水素の結合)過程で発生するのが「過酸化水素」です。それを体内に存在する「カタラーゼ」で分解し、そこで分解しきれなかった分を更に「グルタチオンペルオキシダーゼ」で分解します。スーパーオキシドを3段階で分解するのですね。こうして抗酸化酵素などで分解されることで、大半は酸素を放出して無害な「水」になります。但し鉄[Fe]が反応を促進した場合、過酸化水素は2つに分解された状態になり、「ヒドロキシルラジカル」へと変わります。

  • 矢印
  • ヒドロキシルラジカル[OH]
  • 過酸化水素への紫外線照射や鉄[Fe]などの金属イオンと反応したときに生成される、スーパーオキシドの数十倍という毒性を持つ凶悪な活性酸素が「ヒドロキシルラジカル」で、これを特に「悪玉活性酸素」といいます。酸素電子が1個足りないので他のものとくっつきやすい性質があり、糖質やタンパク質、脂質などあらゆる物質と反応し「過酸化脂質」を体内に蓄積させます。その反応性の高さ故、通常の環境下では100万分1秒しか存在することが出来ず生成後速やかに消滅します。但しヒドロキシルラジカルの元であるスーパーオキシドが常に大量に発生しているため、ヒドロキシルラジカルも常時発生します。

 「ミトコンドリア(細胞)」と「がん」の関係

活性酸素を発生させる活動をする細胞のことをミトコンドリアといいます。

名前だけはご存知の方も多いのではないでしょうか。

最新の研究では私たちの細胞内部のメカニズム、細胞内にあるミトコンドリアとがん細胞の関係もどんどんわかってきています。

水素の医学的効果を発見した日本医科大学の太田成男教授は、著書の『がんとミトコンドリア』にて「ミトコンドリアにはがんを防ぐための重要なシステムがあります。それがミトコンドリア遺伝子です」と大変興味深い記述をされています。

ではミトコンドリア、そしてミトコンドリア遺伝子とは一体どんなものなのでしょうか。

ミトコンドリアとミトコンドリア遺伝子

私たちの身体におよそ60兆個の細胞があり生命活動を行っていますが、ミトコンドリアはこれらの細胞全てに存在する細胞小器官です。

そして各細胞が活動するために必要なエネルギーを生産する働きをしています。

そのためミトコンドリアは人体の発電所といわれています。

ミトコンドリアは「呼吸から取り入れた酸素」と「食事から取り入れた糖分」から生命活動に必要なエネルギーを作り出しますが、同時に「活性酸素」という人体を酸化させる有害な物質も作り出します。更にその「活性酸素」から「悪玉活性酸素(ヒドロキシルラジカル)」が生まれます。

がんの原因であるところの「悪玉活性酸素」を作り出すと聞くと、ミトコンドリアは悪者のように思えますが、そのがん細胞を死滅させるものまた、ミトコンドリアなのです

ではミトコンドリアはどんなメカニズムで動いているのでしょうか。

古い細胞が死に、新しい細胞に生まれ変わる。

この過程で中心的な存在を果たしているのが、このミトコンドリアです。

ミトコンドリアは老化した細胞・ウイルスに犯された細胞、すなわち「生きるために不必要な細胞」に自滅プログラム(自然な死)を実行して、細胞死(アポトーシス)を起こします

つまり、生と死の両方を司り、生物が生きるためのサイクルを作っているのです。

私たちの命は細胞のアポトーシスによって日々、守られているのです。

「悪玉活性酸素」などによって細胞が傷つき、がん細胞に編成されます

けれども実は健康な人の身体でも、がん細胞は毎日、数百から数千作られています

ですが1つの細胞ががん化して10億個ほどに増殖、1cmの大きさになるにはおよそ10年かかるとされています。つまり、これが大きくなる前にミトコンドリアが指令を出しアポトーシスが行われることによって、ほとんどのがん細胞は大きくなる前に処分されるのですね。

ミトコンドリアは「酸素を用いて」必要なエネルギーを生産します(有酸素性代謝)。

通常の細胞の核にある遺伝子とは別に固有の遺伝子(ミトコンドリア遺伝子)を持ち、ミトコンドリアが有酸素性代謝を行う際には、取り込んだ酸素のうち3%程度が「活性酸素」になることがわかっています。こうして作られた活性酸素がミトコンドリア遺伝子に異変を引き起こし、その結果、有酸素性代謝における活性酸素の生産量が更に増えるという悪循環を経て、ミトコンドリアの機能不全とが起こるとされています。

ミトコンドリアの機能不全は、細胞のエネルギー生産に重要な影響を及ぼしますので、細胞本体の機能不全や細胞死に繋がると考えられています。

 ミトコンドリアの異常が生み出す病気

  • ●生活習慣病・・・肥満、高脂血症、糖尿病、メタボリックシンドローム、動脈硬化、心筋梗塞など
  • ●老年病・・・アルツハイマー病、脳変性疾患、老化など
  • ●遺伝病・・・ミトコンドリア病など
  • ●がん
  • ●慢性腎臓病(CKD)
  • ●不妊・・・生殖細胞をつくるにはミトコンドリア遺伝子が必要

ミトコンドリア及びミトコンドリア遺伝子が正常であることが、私たちの身体にとっていかに大事なのかがおわかり頂けたでしょうか。

ミトコンドリアは「活性酸素」を発生させる細胞でもありますが、同時にミトコンドリアの行うアポトーシスというシステムが私たちの身体を生かし、がんから守ってくれているのです

「酸化ストレス」と「抗酸化作用」のバランス

「酸化ストレス」がメタボリックシンドロームを促進させるものだというお話をしました。けれどもこの「酸化ストレス」を生み出す「活性酸素」は一概に悪いものではないということがお分かり頂けたかと思います。「活性酸素」は人間の身体に「酸化ストレス」と「抗酸化作用」をもたらします。健康の為に大事なのは、この二つのバランスが取れていることです。

「酸化ストレス」と「抗酸化作用」のバランス

「メタボエイジング」:長生きについて考える

メタボリックシンドロームを気にされている方は、健康に「長生きしたい」と思っている方が多いのではないでしょうか?長寿について研究する「老年医学」の中に「メタボエイジング」と考え方があります。これは近年提唱されるようになった説で、寿命や老化を主にエネルギー代謝の側面から解明するというのがその概念です。75年間にわたるカロリー制限研究により、動物の寿命にカロリーが深く関わっていることがわかりました。ただカロリー制限をすればいいわけではなく、自由摂取で40%-70%が最も適正という結果が出たのです。これがメタボエイジングの基礎になります。メタボエイジングにおいて大事なのは「インスリン」。カロリー摂取が過剰になるとインスリンの値は上昇し、適正であると低下します。その他にも「血糖値」「動脈硬化」「体脂肪」「炎症」 「がん発生」のすべてがエネルギーの過剰摂取で促進、適正摂取で抑制の傾向にあることがわかっています。今挙げたものがメタボリックシンドロームの特徴、及びそれにより促進あるいは発病する病気だということがおわかりになったかと思います。肥満の健康被害はこんなところにまで及ぶのです。そして長寿の研究の中では百歳を超える方には肥満の方は一人もいないという調査結果が出ています。いかに日頃の生活習慣が大事かよくわかる話ですね。また、「活性酸素」は主にエネルギー代謝過程でミトコンドリアで産出されていることからも、メタボエイジングと酸化ストレスが密接に関係していることがわかります。

メタボリックシンドロームの予防と改善

「内臓肥満」、つまり内臓脂肪は溜まりやすいけれど減らしやすい脂肪です。食べすぎや運動不足により、エネルギー摂取量が消費量を上回り、エネルギーの過剰摂取状態になると内臓脂肪はすぐに溜まってしまいます。その一方で内臓脂肪は絶えず分解と合成を繰り返しているので、エネルギーになりやすい状態にあります。

メタボリックシンドロームになりやすい生活、してませんか?

以下の項目にあてはまる方はメタボリックシンドロームになる可能性が高いです。今から改善を心掛けましょう。

  • ●偏った食事をしている
  • ●食べ過ぎ、飲み過ぎることが多い
  • ●運動を全くしまい
  • ●煙草を吸っている
  • ●不規則な生活を送っている
  • ●昔に比べておなかが出てきた気がする

生活習慣を見直しましょう

内臓脂肪は食事で摂ったエネルギーが使い切れずに余ったものです。特に気を付けたいのが嗜好品の類です。カロリー過剰になりやすいお菓子やアルコールで摂取したエネルギー量を運動で消費するのは大変です。エネルギー収支のバランスを意識するよう心がけましょう。

メタボリックシンドロームの予防・改善に有効な生活習慣を述べたいと思います。難しいものはそんなにないと思います。そして一度に全て、出来る必要もありません。出来ることからひとつずつ、実践していって下さい。ひとつ出来るようになるだけでも身体の状態はぐんとよくなるので、定期的に医療機関で検診を受けるようにしましょう。

<食生活>
・つねに腹八分目を心がける
・栄養バランスの摂れた食事をする
・薄い味付けに慣れる
・揚げ物など高カロリーのものは控える
・間食を控える
・嗜好品(菓子・アルコール類)の摂取を控える
・人工甘味料を使った飲み物(ペットボトルのジュース類)を控え、「水」を飲む習慣をつける
<運動>
・通勤時にエスカレーターではなく階段を利用する
・通勤時、一駅前で降りて歩く
・歩くときは姿勢正しく、早く歩く
・ウォーキングの習慣を取り入れる
・身体を動かす趣味を作る
<その他>
・毎日体重計に乗り、記録をつける
・タバコを止める

そろそろ水素生活、はじめませんか?

今、メタボリックシンドロームの予防・改善に「水素」が注目されていますね。何故今「水素」が脚光を浴びているのか、その効能について詳しく述べていきます。

メタボリックシンドロームと「水素」の力

「水素」には「酸化ストレス」の状態を引き起こす「悪玉活性酸素」を除去する力があります。「悪玉活性酸素」と結びついて無害な水へと還元します。

「悪玉活性酸素」を「無毒化」する仕組み

「活性酸素」の除去にはビタミンC等も有名ですが、一番大きな違いは「大きさ」です。水素は宇宙一小さい分子であるため、ビタミンC等では届かない場所へも浸透していくのです。また血管内で「水」に還元される為、ドロドロの血液を薄めてサラサラにしてくれるので、動脈硬化の予防に繋がります。そして微弱ではありますが、「水素」には炎症を抑える効果があります。くすぶったような非常に低いレベルの炎症状態の持続は肥満や動脈硬化だけではなく、がんやアルツハイマー病など様々な疾患の発症誘因や病態進展に関わるというお話をしました。「水素」の摂取によりこの炎症状態の改善が期待出来るので、それは様々な疾患を抑えることに繋がりますね。

但し「水素」にも欠点があります。それはすぐに揮発してしまうので体内に留まる時間が短いということ、身体の特に悪いところにいく習性があるので、例えば炎症反応よりも悪い部分があれば真っ先にそこを治そうとしますので、すぐにはメタボリックシンドロームへの効果を期待出来ない可能性があることです。この2つの欠点を補うためには毎日定期的に水素を摂り続けることが必要になります。「水素」は水素水やサプリメント、入浴剤、吸入など様々な摂取方法がありますので、あなたのライフスタイルに合った方法で取り入れてみて下さい。メタボリックシンドロームは生活習慣を見直すことが第一ではありますが、「水素」の力もまた、その改善・予防に一役買ってくれるはずです。