動脈硬化
日本人の死亡原因の多くを占める病気に、心臓病と脳卒中があります。がんに次いで死亡原因となっているこの二つの病気は元を辿れば原因は同じで「動脈硬化」から始まります。
では「動脈硬化」とはどんな病気なのでしょうか。ひとことでいうならば文字通り「血管が硬くなる」ことを指しますが、血管が硬くなると何が起きるのでしょう?改めて問われると、なんだか曖昧な病気な気がしませんか。ここではそんな「動脈硬化」のメカニズム、そしてそもそも「血管」とは何なのか、そこから丁寧にお話していきたいと思います。
動脈硬化を起こす「血管」とは何か
血管に流れる血液、それが身体にもたらす恩恵など、「血管」にまつわるお話をします。
血液と血管の役割
人間の身体は多くの器官(臓器)から成り立っています。そしてそれらを働かせるためのエネルギーとして重要なのが「酸素」です。特に、脳、腎臓、肝臓、筋肉は多くの酸素を要します。その酸素を運ぶのが「血液」です。血液にはこの酸素を身体中に張り巡らされた「血管」を通り、全身の器官の組織へと運ぶ役割があります。そして体内で産出された二酸化炭素を受け取り、絶えず、全身を循環しています。この状態を体循環・肺循環といいますがここでは割愛します。
簡単にいうと、「血管」が「酸素の含まれた血液」を全身に送り届けるパイプの役目を果たしているのですね。
動脈と静脈
血管には動脈と静脈があります。この二つは別々のものではなく、身体中に張り巡らされたひと繋がりの血管です。「動脈」とはひとことでいうと、「心臓から送り出される血液を全身の臓器に運ぶための血管」です。血液は「酸素や栄養分」を全身の器官の組織へと運び、働きを終えた血液は心臓に戻ります。そのときに通る血管のことを「静脈」と呼びます。心臓から出ている大動脈は、大人だと直径3cmもあります。それがだんだん枝分かれし、動脈から静脈に変わる毛細血管では、太さは僅か0.01mm程度しかありません。
「動脈」はただ単に血液を運ぶだけではなく、状況に応じて心臓に押し戻すなど、ポンプのように効率よく血液を運ぶ作業を行っています。そのため動脈は簡単に破れたり詰まったりしない「とてもしなやかな強さと弾力性」を備え持っています。それに対して「静脈」は心臓に戻る血液の量に応じて血管の太さを変えられるように「薄くしなやか」に出来ています。
血管の仕組み

動脈も静脈も基本的には「内膜」「中膜」「外膜」の3つの層から出来ています。図をご覧頂ければわかるように、血液に接しているのが「内膜」で、その表面は「内皮細胞」という細胞の層に覆われています。この細胞層は血液から必要な成分だけを取り込むフィルターの役目を果たしています。動脈硬化との関係で特に重要なのが「内膜」と「内皮細胞」です。内膜の外側の「中膜」は、血管としてのしなやかな弾力性を保つための成分(平滑筋細胞など)で出来ています。動脈には心臓から血液が送り出されるときに圧力がかかるので、この層は厚くなっています。一方、静脈は圧力の低い血流なのでこの層は動脈ほど厚くありません。中膜の外側を囲んでいるのが「外膜」の層で、ここには血管の外から細い血管を通じて栄養分などが運ばれてきます。このように血管は幾重もの層で出来ています。この中にリンパ管、神経なども通っています。とても緻密で繊細な造りをしているのですね。
動脈硬化とはどんな病気
「動脈硬化」とは「動脈の壁が厚くなったり、硬くなったりして本来の構造が壊れ、働きが悪くなる病変」の総称です。もともと病理学で使う言葉で、正確にいうとこれは病名ではありません。あくまで状態を指します。ですから、なんだか曖昧な病気だと捉えられがちなのですね。
つまり動脈が硬くなると、その特性であるところの「とてもしなやかな強さと弾力性」が失われ、また内膜が厚くなることで血管の幅が狭まり、心臓が血液をうまく送り出すことが出来なくなり、血管や身体に負担がかかります。それによって様々な病気が引き起こされるのです。
動脈硬化の怖さ
「動脈硬化」が引き起こす病気に、心臓病と脳卒中があると申し上げました。この二つの病気は死亡率が高く、また例え死亡しなくとも後遺症が残るとても怖い病気です。円グラフの「心疾患」「脳血管疾患」に相当するので、二つを合わせると「悪性新生物(がん)」に匹敵する死亡率になります。

動脈硬化のメカニズム
動脈硬化は体内での悪玉コレステロールを含むLDLの増加から始まります。但し、LDLが直接血管を傷つけているわけではありません。LDLが増えすぎるとそれを除去しようと免疫力を作り出す「活性酸素」が活発に作用します。けれどもその「活性酸素」がLDLを酸化させてしまうのです。「酸化LDL」が増えると有害な「過酸化脂質」が血液中に増えてしまい、血液はドロドロに。本来ならば身体によいはずの「活性酸素」が逆に身体を傷つけてしまうのです。「活性酸素」のうち、特に攻撃性の高いものを「悪玉活性酸素」といい、これが「酸化LDL」を作り出します。
「活性酸素」については後ほど詳しくお話しします。

高血圧や糖尿病などによって血管に負担がかかると、血管の内皮細胞に傷がつき、内皮が持っている動脈硬化を防ぐ働きが失われます。

すると血液中の悪玉コレステロールを含むLDLが血管の内側にコレステロールを運びます。ちなみに善玉コレステロールを含むHDLは血管内のコレステロールを取り除きます。また、LDLの中で特に粒子の小さいsmall dense LDLが特に悪い作用を起こすことがわかってきています。悪玉コレステロールが血管の内側に入り込むと、それを除去するために「活性酸素」が活発になり、その作用により酸化を受けてLDLは「酸化LDL」へと変化します。それを処理するために白血球の一種である単球も内膜へと入り込み、マクロファージに変わります。

マクロファージは酸化LDLを取り込んで、やがて死んでいきます。この結果、内膜に含まれていたコレステロールや脂肪が、お粥のような柔らかい沈着物となってたまっていき、内膜はどんどん厚くなります。このようにしてできた血管のコブを「プラーク(粥腫)」と言います。「プラーク」ができた状態を粥状(アテローム)動脈硬化と言います。このような状態になったとき、体内に善玉コレステロールを含むHDLがいれば、この「プラーク」からコレステロールを抜きとることで、動脈硬化を解消しようとしてくれます。
プラークができると、血流が悪くなり、血管が少し収縮しただけで血流がとだえて、その血管により酸素や栄養が送られている心臓や脳に症状が起こります。それが心筋梗塞や脳梗塞を引き起こすのですね。
動脈硬化の種類
- <アテローム性動脈硬化・細動脈硬化>
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「高脂血症」や「糖尿病」、「高血圧」が引き金となって動脈硬化を防ぐ動脈の内膜が傷つき、そこに、悪玉コレステロールを「活性酸素」が酸化させることで出来る「酸化LDL」を取り込んで死んだマクロファージが沈着し、内膜を持ち上げる「粥状の塊(プラーク)」が出来ます。これらは血中のコレステロール過多が原因です。悪玉コレステロールが増えれば増えるほどプラークは大きくなっていき、血管を狭め、やがては血栓となって詰まらせます。また「酸化LDL」は「過酸化脂質」を増やしますので血液がドロドロになり、血管内を流れにくくし、血管が詰まる一因となります。
- <カルシウム・パラドックス動脈硬化>
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カルシウムの摂取不足からカルシウム欠乏になった血液中に、骨の中のカルシウムが過剰に溶け出し、骨粗しょう症と血管の収縮や石灰化を同時に引き起こす病気です。
但しそれを恐れてカルシウムを過剰に摂取すると、血中カルシウム濃度が急激に変化するので、それに対して血中カルシウム濃度を適正な値に維持しようとするホメオスターシス(恒常性の維持)機能が過剰反応します。すると過多なカルシウムがどんどん血中へと流れ出し、血管の内壁に進入して、やがては動脈硬化を引き起こします。またこれを繰り返すと骨粗しょう症にもなります。
カルシウムの摂取は必要ですが、それは現代では手軽な摂取方法である「牛乳」ではなく、日本古来の「小魚やエビ、海藻類や有機野菜」、そして「水」から摂ることがよいとされています。牛乳の飲みすぎは骨粗しょう症の原因になるという、世界的な統計もあります。カルシウムの取りすぎには注意、ということですね。あくまで適切な量を摂ることが大事です。
- <閉塞性動脈硬化症>
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血管に出来たプラークが肥大化し、血管が完全に詰まってしまい、そこから先への血流が閉ざされてしまう重度の動脈硬化で、血管のバイパス手術などが必要になります。
誤解されがちな動脈硬化
動脈硬化についてお話ししてきましたが、動脈の硬化症状の最も誤解されがちな点は、中高年になってから起こるものだと信じられがちなところです。実際は0歳の時点で既に主な動脈に「硬化」の初期症状が見られ、10歳前後から急速に進んでいきます。そして30歳頃になると、「完成された動脈硬化」が現れるようになります。
人間は生まれた瞬間から体内の血管の硬化症状と付き合い続けなければならず、それは人間が生まれた瞬間から老いていくのと同じ現象なのです。つまり、どれほど身体に良い健康的な生活を心がけていたとしても、誰もがこの動脈の硬化症状からは逃れられないのです。但し、健全な生活は「完成された動脈硬化」の促進を抑えることは出来ます。一度壊れた血管は修復出来ません。だから壊れないように抑制すること、それが多くの病気の予防へと繋がるのです。
無症状で進行する動脈硬化
動脈硬化はどのようにして進んでいくのでしょうか。
年齢が高くなるにつれ、内膜の中に溜まったプラークは脂肪沈着し、やがて「脂肪班」と呼ばれる状態になります。20~30歳頃から始まり、この「脂肪班」などが大きくなり、血管の内側に向かって盛り上がっていき、50~60歳頃になると血管自体が狭くなります。そしてスムーズな流れだった血流と内膜の間に無理(ストレス)が生じ、内膜を覆っている内皮細胞が壊れ、血の塊(血栓)が出来ます。この塊で血管が詰まると、急性心筋梗塞などの発作として初めて症状が現れるようになります。
ですから、自覚症状が出たということは、既に20~30年に及ぶ水面下での「動脈硬化の進行」があったと考えなくてはなりません。硬化は無症状のまま進行し、自覚出来ないということを覚えておきましょう。
「酸化LDL」を作り出す「活性酸素」とは?
血管中にプラーク(瘤)を作るのは「酸化LDL」でしたね。そしてその「酸化LDL」は、悪玉コレステロールを含むLDLが「活性酸素」によって「酸化」することによって生まれれるということを動脈硬化のメカニズムでお話しました。では「活性酸素」、そして「酸化現象」とは一体どんなものなのでしょうか。
「活性酸素」とは何か
私たちは、呼吸により1日に500ℓ以上の酸素を体内に取り入れています。その酸素を使って、食事で摂った糖分や栄養素を燃やしエネルギーを作り出していますが、この過程で取り入れた「酸素の約2%分」が「強い酸化作用を持つ活性酸素」に変わるといわれています。
もともと「活性酸素」は身体によいものだと考えられてきました。その強い攻撃力で体内に侵入したウイルスや細菌を退治するという大切な役割があるからです。白血球の一部が「活性酸素」の力を利用して、体内に侵入してきた最近を破壊してくれる、いわゆる「免疫力」を作り出してくれる存在なのです。
けれどもその後「活性酸素」の研究が進み、「活性酸素」には種類があることや、「活性酸素」が増えすぎてしまうと細菌だけではなく、自分の身体の細胞も傷つけてしまったり、身体を酸化させてしまうという害があることがわかりました。
「活性酸素」の「酸素」。
「酸素」はあらゆるものを「酸化させる力」を持ちます。
ナイフで切ったりんごの断面が徐々に茶色くなっていく、これが「酸化の力」です。
この「酸化」は人間の身体にももちろん作用します。その最もわかりやすい例が「酸化現象」=「老化現象」です。これは体内の「活性酸素」が細胞をサビつかせ、機能を衰えさせるために起きる現象です。

「活性酸素」の種類
「活性酸素」には種類があると申し上げました。
体内で発生する「活性酸素」には「善玉活性酸素」と「悪玉活性酸素」があり、それが以下の4種類に分かれます。この中で遺伝子や細胞を傷つける「ヒドロキシルラジカル」を特に「悪玉活性酸素」と一般的に呼び、区別しています。傷ついた身体を修復するために生まれる「善玉活性酸素」から、身体を傷つける「悪玉活性酸素」が生まれるというジレンマがあることがわかります。
- <スーパーオキシド:善玉活性酸素>
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この活性酸素はミトコンドリア細胞が酸素からエネルギーを作るときに生成されるので、私たちが呼吸をしている限りこの活性酸素の発生は避けて通れません。またウイルスや異物などが体内に侵入した際に、白血球により一番初めに大量に放出され異物を撃退する作用があります。そんな善玉作用のあるスーパーオキシドですが、異物を撃退するということからもわかる通り「毒性」が高く、放っておくと体内を傷つけてしまいます。
- <過酸化水素:善玉活性酸素>
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スーパーオキシドが体内の抗酸化酵素であるSOD(スーパーオキシドディスムターゼ)によって分解される過程で酸素とともに生成されるのが「過酸化水素」です。体内の細菌を殺してくれる善玉作用が期待できます。傷口の消毒用の薬品に「オキシフル」がありますが、これは「過酸化水素水」を3%の溶液にしたもので「活性酸素の毒性」をうまく利用したものです。大半が体内の抗酸化酵素で無害化され水になりますが、極めて不安定な性格と「非常に強い毒性」を持ちます。
- <ヒドロキシルラジカル:悪玉活性酸素>
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スーパーオキシドから生じた過酸化水素が体内の鉄や銅などの金属イオンと反応して生成する、最も酸化力が強く毒性が高い活性酸素が「ヒドロキシルラジカル」です。スーパーオキシドの数十倍の攻撃性を持つ凶悪な活性酸素で、善玉作用はなく、遺伝子や細胞膜を傷つけます。反応性がとても高く、発生しては消えるということを100万分1秒という単位で繰り返し、糖質やタンパク質、脂質などと反応し「過酸化脂質」を蓄積させていきます。じわじわと身体を蝕んでいく存在で、困ったことにヒドロキシルラジカルを分解する酵素は体内には存在しないのです。
- <一重項酸素:悪玉活性酸素>
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悪質な性格をした反応性が強い活性酸素です。放射線や紫外線などの光の刺激により、皮膚や目に大量発生し、皮膚を形成するタンパク質や脂肪を酸化、変質させてしまいます。皮膚がん等を引き起こす非常に怖い活性酸素であり、肌の大敵です。
「悪玉活性酸素(ヒドロキシルラジカル)」の発生過程
身体の中で「悪玉活性酸素(ヒドロキシルラジカル)」の発生する過程についてお話します。 「悪玉活性酸素(ヒドロキシルラジカル)」が発生するまでには4つの過程を踏みます。 身体がいかに「悪玉活性酸素(ヒドロキシルラジカル)」を作らないようにしているかがおわかりになるかと思います。それほど毒性の高い物質なのです。

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私たちは呼吸をすることで酸素を体内に取り込みます。一般的な酸素分子は、酸素原子が2個結びついて1個の酸素分子として存在しています。
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傷ついた細胞を修復したとき、その副産物として生まれるのが「スーパーオキシド」です。細胞の修復のために、酸素が電子1個を余分に取り込むのですね。するとその結合した分子は不安定になり、強烈な酸化力を示します。これが活性酸素「スーパーオキシド」の発生過程です。これを体内に存在する「SOD」で分解します。SODとは「Super Oxide Dismutase」の略で、その名が示すように「スーパーオキシド」を分解する酵素のことです。SODはスーパーオキシドが「過酸化水素」に変化する還元反応を促進する触媒として働きます。他の物質から奪った電子が酸素分子に入り込んで、一個の不対電子を持っているのが特徴です。
※還元反応とは「水素が加わった反応」のことです。
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スーパーオキシドをSODが分解する(水素の結合)過程で発生するのが「過酸化水素」です。それを体内に存在する「カタラーゼ」で分解し、そこで分解しきれなかった分を更に「グルタチオンペルオキシダーゼ」で分解します。スーパーオキシドを3段階で分解するのですね。こうして抗酸化酵素などで分解されることで、大半は酸素を放出して無害な「水」になります。但し鉄[Fe]が反応を促進した場合、過酸化水素は2つに分解された状態になり、「ヒドロキシルラジカル」へと変わります。
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過酸化水素への紫外線照射や鉄[Fe]などの金属イオンと反応したときに生成される、スーパーオキシドの数十倍という毒性を持つ凶悪な活性酸素が「ヒドロキシルラジカル」で、これを特に「悪玉活性酸素」といいます。酸素電子が1個足りないので他のものとくっつきやすい性質があり、糖質やタンパク質、脂質などあらゆる物質と反応し「過酸化脂質」を体内に蓄積させます。その反応性の高さ故、通常の環境下では100万分1秒しか存在することが出来ず生成後速やかに消滅します。但しヒドロキシルラジカルの元であるスーパーオキシドが常に大量に発生しているため、ヒドロキシルラジカルも常時発生します。
「悪玉活性酸素」を無毒化する方法
体内で「活性酸素」を作り出すのはミトコンドリアという細胞です。この単語をご存知の方は多くいらっしゃるかと思います。ミトコンドリアは酸素と食事から摂る糖分を使い、人間が活動するために必要なエネルギーを作り出します。このとき一緒に作り出されるのが「活性酸素」であり、「悪玉活性酸素(ヒドロキシルラジカル)」なのですね。ミトコンドリアは人体の発電所です。つまり「悪玉活性酸素」を作らせないためにミトコンドリアの活動を止めれば、身体のあらゆる器官の活動が止まり、死に至ります。つまり、生きている限り「悪玉活性酸素」の排出を止めることは出来ないのです。そして動脈硬化の原因でもある「酸化LDL」を作り出す「悪玉活性酸素(ヒドロキシルラジカル)」は、人間の体内では無毒化することは出来ません。
ではどうすればよいのでしょうか。
自浄作用が働かないのならば、「悪玉活性酸素」を人工的に取り除けばよいのではないでしょうか。
それが出来るのが、今医療の世界でも注目を集めている「水素」です。
水素には高い抗酸化作用があり、動脈硬化の原因となる酸化LDLを作り出す「悪玉活性酸素」に結びついて還元し、無害な水に変えることが出来るのです。
この新しい発見は、動脈硬化の治療を前進させてくれるものです。

動脈硬化の原因
五大危険因子
動脈硬化の原因はひとつではありません。
動脈硬化を引き起こす原因を「危険因子」と呼びますが、その中には「男性であること」「年をとること」などのように、自分ではどうにもならないものから、「高血圧」「高脂血症」「喫煙」「肥満」「ストレス」などのように、自分の意志次第でコントロール出来るものもあります。こうした危険因子を多く持つ人ほど、動脈硬化が加速する傾向にあることがわかっています。特に「高血圧」「高脂血症」「喫煙」は三大危険因子と呼ばれています。また危険因子は相互関係にあるので、因子が増えればリスクが増える分、のです。
- <高血圧>
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アメリカでは高血圧を「サイレント・キラー(沈黙の殺し屋)」と呼んできます。静かに忍び寄ってきては、やがて心筋梗塞や狭心症の下地になりかねないという警告です。
高血圧は細い血管の動脈硬化を促すだけではなく、大動脈も硬化させる大変危険な因子です。塩分の取り過ぎや肥満で血圧が高くなっていくのは、皆さんよくご存知のはずです。
高血圧を専門とする医師による日本高血圧学会では、「収縮期血圧(最高血圧):140mmHg」以上、「拡張期血圧:90mmHg」以上が高血圧と定義しています。血圧が高ければ高いほど、心臓病や脳卒中などにかかるリスクは当然高くなります。
- <高脂血症>
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血液中の脂肪が高い「高脂血症」も強い危険因子です。脂肪分のうち増えることで動脈硬化を促すのは、総コレステロール、LDL(悪玉コレステロール)、中性脂肪血症などです。逆にHDL(善玉コレステロール)が減っても動脈硬化が促進されます。
厚生省の発表によると「総コレステロール値は220mg/dl以上、LDL(悪玉)コレステロール値は140mg/dl以上、またHDLコレステロール値は40mg/dl以下」になると、狭心症や心筋梗塞の合併が増えるとされています。
- <喫煙>
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1日20本以上の喫煙者では、虚血性心臓病の発生が50~60%も高くなります。喫煙は、がん、肺や消化器などの病気だけではなく、狭心症、心筋梗塞、脳梗塞、閉塞性動脈硬化症といった動脈硬化性疾患の発症を促す強い因子です。
さらに悪いことに、喫煙は他の危険因子にも影響を及ぼし、総コレステロール値、LDL(悪玉コレステロール)値を高め、逆にHDL(善玉コレステロール)を下げるという二重のリスクがあります。
動脈硬化の予防・治療にはまず「禁煙が必要」です。そして喫煙者は、自身だけではなく副流煙を吸わされる「受動喫煙者」にも健康被害を与えることを知っておくべきです。
- <肥満>
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肥満の程度を示す指標として「BMI」があります。
BMI=体重(kg)÷(身長(m)×身長(m)
簡単に計算出来るサイトもたくさんありますから、ぜひご自分の肥満度をチェックしておきましょう。日本肥満学会の基準では、19.8~24.2は「正常範囲」、24.2~26.4は「過多体重」、26.4以上は「肥満」です。
肥満の人は血液中の脂肪が過多になりやすく、さらに高血圧、糖尿病などを合併しやすいので、他の危険因子にも大きな影響を及ぼします。
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<糖尿病>
糖尿病の発症には遺伝的な素因もありますが、日本人の大半が過食、運動不足などの生活習慣が原因です。糖尿病の人は、首の動脈の肥厚、脳血管障害、虚血性心臓病、大動脈硬化、足の閉塞性動脈硬化症などが、糖尿病でない人に比べ、高頻度にしかも全身にわたって起こりやすくなります。
- 糖尿病になると、他の危険因子、特に高血圧、中性脂肪血症、低HDL血症などがしばしば起こるようです。
動脈硬化が引き起こす病気
動脈硬化は様々な病気を引き起こしますが、特に怖いのが死亡率の高い心筋梗塞と脳梗塞です。死亡率の高さは前述の通り、がんに匹敵します。
心筋梗塞
日本人の死亡原因の第2位が心臓の病気なのですが、その多くが心筋梗塞と心筋梗塞からおきる心臓の病気です。心筋梗塞は発病が直接命に関わる非常に怖い病気です。
血管内に出来たプラークが破れてそこに血栓ができ、冠動脈が完全に詰まって、心筋に血液が行かなくなった状態を「心筋梗塞」と呼びます。
一般的に心筋梗塞は中高年男性や肥満傾向の方に多い病気といわれていますが、近年、若い人や女性が心筋梗塞になるという話を聞くようになりました。そして肥満でもない男性や女性の20~40代の人が心筋梗塞にかかっています。
お若い方でも、まだまだ自分には関係ないなどとは言ってはいられません。これには近年の欧米化した生活習慣が深く関わっています。
心筋梗塞は発症からの時間の経過で異なっており、発症から3日以内(2週間以内の場合もある)の心筋梗塞を急性心筋梗塞と呼び、発症から30日以上が経過し、壊死が繊維化して落ち着いた状態を陳旧性心筋梗塞と呼びます。陳旧性心筋梗塞は、心筋が繊維化しており、症状も安定していますが、慢性心不全などのリスクが高い状態なので注意が必要です。
心筋梗塞の前兆
心筋梗塞の疑いがある場合には速やかに救急車を呼んでください。心筋梗塞の致死率は40%と高く、ほとんどが1~2時間以内に適切な処置が行わなければ死に至る危険な状態に患者は置かれています。
- <胸の痛み・呼吸困難・嘔吐>
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突然の胸の痛みが訪れます。その痛みは非常に激しいもので、強い息苦しさを感じ、呼吸困難に陥ります。その場に倒れ込む人も少なくありません。このほかに圧迫感や動悸、冷や汗、吐き気、嘔吐を伴うことがあります。
- <肩や背中の痛み>
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心筋梗塞に限らず、痛みは胸だけに出るとは限りません。<背中やみぞおち、肩
にまで広がることがあります。奥歯の痛みや喉の痞えなどを感じる人もいます。また、このような痛みが心筋梗塞の前兆として現れることがあるので、注意が必要です。 - <左手小指の痛み>
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痛みが小さくても油断してはいけません。指先にだけ痛みを感じることもあります。特に高齢者や糖尿病の方など、痛みを感じる神経が麻痺しているケースでは、痛みが強く現れないことがあります。
脳梗塞
様々な脳の病気
日本人の死亡原因第3位となっている脳血管性疾患の中で特に多いものが「脳卒中」です。脳卒中は近年増加していて、現在年間25万人以上の人が発症しています。
「脳卒中」とは脳の病気の総称です。急激に症状が発症したものをとくに「脳卒中」と呼びます。この中で「血管が狭窄したり詰まったりして起こるもの」を「虚血性脳血管障害」といい、この虚血性脳血管障害には「脳梗塞」と「一過性脳虚血発作(TIA)」があります。他に有名な脳の病気として「脳内出血」や「くも膜下出血」などがありますね。
脳卒中の60%以上を占めるのが「脳梗塞」で、脳の病気では一番起こる可能性が高い病気です。脳梗塞は「脳の血管が極度に狭くなったり詰まったりしてしまうことで、脳に酸素や栄養が行き渡らなくなり、脳の細胞が部分的に壊死してしまう病気」です。大変死亡率が高い上に、幸いにして一命を取り留めたとしても麻痺などの後遺症が残る可能性が高いという、とても怖い病気です。
脳梗塞の前兆
- <運動障害、感覚障害>
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右側もしくは左側の片方だけ、手や足が麻痺して動かなくなったり、しびれるような感覚障害が起こったりします。右の脳がダメージを受けると左側に障害が発生し、左脳の場合は右側の障害が発生します。手足以外にも、顔の筋肉が片方だけ緩んだり、口角がさがってよだれが出たりする事もあります。
- <言語障害、失語症>
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ろれつが回らず何を言っているのか聞き取れなくなったり、話したいのに言葉が出なくなったり、言葉が理解できなくなったりします。
家族がいつもと違うことに気が付き、受診するケースが多くみられます。
- <視野障害>
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視野の半分だけが欠けたり、物が二重に見えたりすることがあります。
- <平衡感覚の障害>
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>体のバランスが取れなくなって転倒
したり、ふらついたり、めまいが起こる事があります。めまいと一緒に嘔吐をすることもあります。 - <嚥下障害>
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口の中の筋肉や舌、のどにも麻痺が起こり、食べ物がうまく飲み込めなくなる時があります。
- <意識障害、呼吸困難>
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ぼーっとして適切な受け答えが出来ず、呼びかけられてもすぐ寝てしまったり、急に息苦しくなったりすることがあります。
動脈硬化を促進させないためには
長くなってしまいましたが、よく耳にする「動脈硬化」という単語、これがどんなものなのか、なんとなくでもご理解頂けたでしょうか?
動脈硬化は血管が硬くなったり壊れたりする病態のことを指し、人間(実験に使うマウスなどを始め、生物ならといってもよいです)である以上、誰の中にも潜んでいる危険な病気の要因だというお話をしてきました。けれどもだからこそ、「動脈硬化」を悪化させ、更には他の致死率の高い病気を引き寄せる否かは、ご自身の健康への意識の高さにかかっているといってもよいのです。五大危険因子、ひとつでも減らしていきませんか?
動脈硬化の薬物治療
既に医療機関を受診して動脈硬化だと診断され、状態や程度によっては必要に応じて、薬を使う「薬物療法」を行っている方も多いと思います。
動脈硬化の薬物療法の中で最も重要なのが「コレステロールを下げること」です。アテローム動脈硬化は血液中に余分なコレステロール(悪玉コレステロール)が増えることにより発生するので、血中コレステロールを下げることが大事なのですね。
血中コレステロールを下げる薬を始めとして、血栓が出来て血管が詰まるのを防ぐために、血液を固まりにくくする「抗血栓療法」や、高血圧を改善する「血圧降下薬」、血糖値を下げる「経口血糖降下薬」、血液中の尿酸値が異常に高くなる「高尿酸血症」に対する治療薬などが使われたりします。
薬だけに頼らない動脈硬化の予防を
「薬を飲んでいるから大丈夫」そう思っていませんか?これは大きな間違いです。
病院で渡された薬を飲むだけで、病気のことを知ろうとしなかったり、毎日の生活習慣に無頓着であれば、薬をどれだけ増やしても追いつかず、症状は進行してしまいます。
病気への理解なしに病気の克服は出来ません。
病気を治すための最初の一歩はまず、自分の病気を知るところから始まります。動脈硬化は生活習慣が促進する病気です。それはこの記事をお読み頂いた方は十分におわかり頂けたかと思います。毎日の生活習慣が自分の身体を作るのです。知識を得て、食事に気を使い運動を取り入れる生活習慣をつけることではじめて、動脈硬化を予防・抑制することが出来るのです。
毎日の生活に「水素」をとりいれませんか?
毎日の生活習慣を見直すこと、これが動脈硬化の予防に当たって一番効果があります。そして促進の抑制のためには絶対に必要なことです。既に動脈硬化だと診断されている方の中には、医療機関を受診して薬によるアプローチも併せて必要な方もいらっしゃるでしょう。今までは動脈硬化へのアプローチにはこの2つしかありませんでした。
ですが今、医療の世界で、動脈硬化への新しいアプローチ方法が注目を浴びています。それが「水素」です。「水素」には自浄作用の働かない「悪玉活性酸素」に結びついて水に還元し、体内から除去してくれる力がありましたね。

では何故、水素なのでしょうか。
水素は宇宙一小さな分子なので、体内の隅々まで、どこへでもいくことが出来ます。分子のサイズの大きい薬では届かないところまで、水素ならば簡単に届くのです。そして水素は「悪玉活性酸素」にだけ反応します。他の生きるために必要な栄養などには反応しません。一般的に「活性酸素」を減らすことの出来る抗酸化食品として「ビタミンC」「ビタミンE」「ポリフェノール」などが有名ですが、これらの食品は「すべての活性酸素に反応」するので身体に必要な善玉活性酸素まで現減少させてしまうのですね。この2つの特性が動脈硬化の治療法として、「水素」が注目を浴びている理由です。
血管内に入った水素には、「悪玉活性酸素」を還元することでプラークが出来るのを防ぎ、また血管内で「水」に還元されるのでドロドロの血液を薄めサラサラにする力があります。
但し、水素にも欠点があります。それはすぐに揮発してしまうので体内に留まる時間が短いということ、身体の特に悪いところにいく習性があるので、例えば動脈硬化よりも酷い部分があれば真っ先にそこを治そうとしますので、すぐには動脈硬化への効果を期待出来ない可能性があることです。この2つの欠点を補うためには、薬と同じように、毎日定期的に水素を摂り続けることが必要になります。
けれども薬と違って、水素は飲み忘れても問題がありませんし、副作用がないとされています。そして「水素」には、水素水やサプリメント、入浴剤、吸入など様々な摂取方法がありますので、あなたのライフスタイルに合った方法で手軽に取り入れることが出来ます。生活習慣を見直すには根気や忍耐といった努力と時間が必要ですが、「水素」を取り入れることはとても簡単で、今すぐ出来ますよね?
まずは水素で血管の状態を整えながら、毎日の生活習慣を見直していく。
この2段構えで健全な身体を作って保ち、動脈硬化、引いては動脈硬化が引き起こす病気の予防を始めませんか。