高血圧
昨今、深刻な問題として注目されている生活習慣病の中に「高血圧」があります。
2006年の国民健康・栄養調査によると40~74歳の日本人のうち約6割の男性、約4割の女性が高血圧だという結果が出ています。
これは近年の欧米風のライフスタイルへの変化と、生活習慣の乱れ(飲酒・喫煙・偏った食生活)が主な原因とされています。
高血圧とはどんな病気
そもそも血圧とは?
私達の身体の中には血液が流れています。そして心臓がポンプの役割を果たすことで、身体の隅々にまで張り巡らされた血管に、新鮮な血を送り出すのです。血圧というのは、心臓が送り出している血圧が血管に加える力(圧力)のことをいいます。

血圧を測ると、上・下2つの数値が示されます。この2つの血圧の数値は、ポン負うとしての心臓の動き、つまり収縮と拡張を表しています。
「上」が「収縮期血圧」。
心臓が血液を送り出すために収縮したときの大動脈の内圧で、値は最高(最大)値を示します。
「下」は「拡張期血圧」。
心臓が拡張して酸素を運んで戻ってきた血液を心臓へ溜め込むときの動脈の内圧で、値は最低(最小)値を示します。血圧は人によって差があることはもちろん、同じ人でも体調や時間帯、季節、天候などによって変わってきます。
どこからが高血圧?
高血圧は、正常者の血圧より高い血圧値を持続している場合をいいます。高血圧を専門とする医師による日本高血圧学会では、「収縮期血圧(最高血圧):140mmHg」以上、「拡張期血圧:90mmHg」以上が高血圧と定義しています。
但し、高血圧かどうかは自分で測って判断するのではなく、医師の判断を仰ぎましょう。

降圧目標値は誰でも同じ?
年齢や合併症などの状況により、ひとりひとりの降圧目標値は異なります。

健全な若年・中年者では135/85mmHg未満が目標です。
一方、糖尿病や慢性腎臓病(CKD)の合併症を持つ患者さんや心筋梗塞の患者さんでは、ガイドラインの中で最も低い目標値が設定されています。これは糖尿病や腎障害がある人は、脳や心臓の病気を発症する危険性が高いため、もっと血圧を低く下げて病気の予防をするためです。
このように血圧値の目標はひとそれぞれ異なるのです。
高血圧には二種類ある
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<二次性高血圧>
腎臓、心臓、血管、内分泌系の異常が原因として考えられます。原因となっている病気をきちんと治療すれば、自然と血圧も下がります。
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<本態性高血圧>
原因のはっきりしない高血圧を、本態性項血圧といいます。日本人の場合、圧倒的にこちらの数が多く、80~90%に昇ります。もともと高血圧になる遺伝子的訴因がある人に、塩分の多い食事や飲酒、ストレス、運動不足などの環境因子が影響して高血圧になることがわかっています。
高血圧のメカニズムと動脈硬化
生活習慣の乱れ・悪化すると、「活性酸素」が増加していきます。
増加した「活性酸素」が体内の「不飽和脂肪酸」と結びつくと、「過酸化脂質」へと変化します。「過酸化脂質」とはコレステロールや中性脂肪といった脂質が「活性酸素」によって「酸化」したものの総称です。「過酸化脂質」は主に脂質の不飽和結合に対して一重項酸素やハイドロペルオキシラジカル等が反応して生成すると考えられています。中性脂肪由来の「過酸化脂質」は細胞内でスーパーオキシドアニオンを発生させます。
活性酸素とは?
私たちは、呼吸により1日に500ℓ以上の酸素を体内に取り入れています。その酸素を使って、食事で摂った栄養素を燃やしエネルギーを作り出していますが、この過程で取り入れた「酸素の約2%分」が「強い酸化作用を持つ活性酸素」に変わるといわれています。
また食事から摂ったエネルギーも「活性酸素」へと変わります。
もともと「活性酸素」は身体によいものだと考えられてきました。
その強い攻撃力で体内に侵入したウイルスや細菌を退治するという大切な役割があるのです。白血球の一部が「活性酸素」の力を利用して体内に侵入してきた細菌を破壊してくれる、いわゆる「免疫力」を作り出してくれるのです。
けれどもその後「活性酸素」の研究が進み、「活性酸素」には種類があることや、「活性酸素」が増えすぎてしまうと細菌だけではなく自分の身体の細胞も傷つけてしまったり、身体を酸化させてしまうという害があることがわかりました。
「酸素」はあらゆるものを「酸化させる力」を持ちます。
ナイフで切ったりんごの断面が徐々に茶色くなっていく、これが酸化の力です。
この「酸化」は人間の身体にももちろん作用します。その最もわかりやすい例が「酸化現象」=「老化現象」です。これは体内の「活性酸素」が細胞をサビつかせ、機能を衰えさせるために起きる現象です。

「活性酸素」の種類
「活性酸素」には種類があると申し上げました。
体内で発生する「活性酸素」には「善玉活性酸素」と「悪玉活性酸素」があり、それが以下の4種類に分かれます。この中で遺伝子や細胞を傷つける「ヒドロキシルラジカル」を特に「悪玉活性酸素」と一般的に呼び、区別しています。傷ついた身体を修復するために生まれる「善玉活性酸素」から、身体を傷つける「悪玉活性酸素」が生まれるというジレンマがあることがわかります。
- <スーパーオキシド:善玉活性酸素>
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この活性酸素はミトコンドリア細胞が酸素からエネルギーを作るときに生成されるので、私たちが呼吸をしている限りこの活性酸素の発生は避けて通れません。またウイルスや異物などが体内に侵入した際に、白血球により一番初めに大量に放出され異物を撃退する作用があります。そんな善玉作用のあるスーパーオキシドですが、異物を撃退するということからもわかる通り「毒性」が高く、放っておくと体内を傷つけてしまいます。
- <過酸化水素:善玉活性酸素>
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スーパーオキシドが体内の抗酸化酵素であるSOD(スーパーオキシドディスムターゼ)によって分解される過程で酸素とともに生成されるのが「過酸化水素」です。体内の細菌を殺してくれる善玉作用が期待できます。傷口の消毒用の薬品に「オキシフル」がありますが、これは「過酸化水素水」を3%の溶液にしたもので「活性酸素の毒性」をうまく利用したものです。大半が体内の抗酸化酵素で無害化され水になりますが、極めて不安定な性格と「非常に強い毒性」を持ちます。
- <ヒドロキシルラジカル:悪玉活性酸素>
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スーパーオキシドから生じた過酸化水素が体内の鉄や銅などの金属イオンと反応して生成する、最も酸化力が強く毒性が高い活性酸素が「ヒドロキシルラジカル」です。スーパーオキシドの数十倍の攻撃性を持つ凶悪な活性酸素で、善玉作用はなく、遺伝子や細胞膜を傷つけます。反応性がとても高く、発生しては消えるということを100万分1秒という単位で繰り返し、糖質やタンパク質、脂質などと反応し「過酸化脂質」を蓄積させていきます。じわじわと身体を蝕んでいく存在で、困ったことにヒドロキシルラジカルを分解する酵素は体内には存在しないのです。
- <一重項酸素:悪玉活性酸素>
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悪質な性格をした反応性が強い活性酸素です。放射線や紫外線などの光の刺激により、皮膚や目に大量発生し、皮膚を形成するタンパク質や脂肪を酸化、変質させてしまいます。皮膚がん等を引き起こす非常に怖い活性酸素であり、肌の大敵です。
「悪玉活性酸素(ヒドロキシルラジカル)」の発生過程
身体の中で「悪玉活性酸素(ヒドロキシルラジカル)」の発生する過程についてお話します。 「悪玉活性酸素(ヒドロキシルラジカル)」が発生するまでには4つの過程を踏みます。 身体がいかに「悪玉活性酸素(ヒドロキシルラジカル)」を作らないようにしているかがおわかりになるかと思います。それほど毒性の高い物質なのです。

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私たちは呼吸をすることで酸素を体内に取り込みます。
一般的な酸素分子は、酸素原子が2個結びついて1個の酸素分子として存在しています。
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傷ついた細胞を修復したとき、その副産物として生まれるのがスーパーオキシドです。細胞の修復のために、酸素が電子1個を余分に取り込むのですね。するとその結合した分子は不安定になり、強烈な酸化力を示します。これが活性酸素「スーパーオキシド」の発生過程です。これを体内に存在する「SOD」で分解します。SODとは「Super Oxide Dismutase」の略で、その名が示すように「スーパーオキシド」を分解する酵素のことです。SODはスーパーオキシドが「過酸化水素」に変化する還元反応を促進する触媒として働きます。他の物質から奪った電子が酸素分子に入り込んで、一個の不対電子を持っているのが特徴です。
※還元反応とは「水素が加わった反応」のことです。
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スーパーオキシドをSODが分解する(水素の結合)過程で発生するのが「過酸化水素」です。それを体内に存在する「カタラーゼ」で分解し、そこで分解しきれなかった分を更に「グルタチオンペルオキシダーゼ」で分解します。スーパーオキシドを3段階で分解するのですね。こうして抗酸化酵素などで分解されることで、大半は酸素を放出して無害な「水」になります。但し鉄[Fe]が反応を促進した場合、過酸化水素は2つに分解された状態になり、「ヒドロキシルラジカル」へと変わります。
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過酸化水素への紫外線照射や鉄[Fe]などの金属イオンと反応したときに生成される、スーパーオキシドの数十倍という毒性を持つ凶悪な活性酸素が「ヒドロキシルラジカル」で、これを特に「悪玉活性酸素」といいます。酸素電子が1個足りないので他のものとくっつきやすい性質があり、糖質やタンパク質、脂質などあらゆる物質と反応し「過酸化脂質」を体内に蓄積させます。その反応性の高さ故、通常の環境下では100万分1秒しか存在することが出来ず生成後速やかに消滅します。但しヒドロキシルラジカルの元であるスーパーオキシドが常に大量に発生しているため、ヒドロキシルラジカルも常時発生します。
高血圧は「動脈硬化」を引き起こし、他の病気の原因に
血管が詰まったり破けたりする原因に、動脈硬化があります。
動脈硬化の原因は悪玉コレステロールを含む「LDL」の増加です。但し、「LDL」が直接血管を傷つけているわけではありません。LDLが増えすぎると、それを除去しようと免疫力を作り出す「活性酸素」が活発に作用します。けれどもその「活性酸素」がLDLを酸化させてしまいます。「酸化LDL」が増えると有害な「過酸化脂質」が増えてしまい、血液はドロドロになります。
本来ならば身体によいはずの「活性酸素」が逆に身体を傷つけてしまうのです。このうち特に攻撃性が高く毒性の高いものが「悪玉活性酸素」です。

高血圧によって血管に負担(圧力)がかかると、血管の内皮細胞に傷がつき、内皮が持っている動脈硬化を防ぐ働きが失われます。

すると血液中の悪玉コレステロールを含むLDLが血管の内側にコレステロールを運びます。ちなみに善玉コレステロールを含むHDLは血管内のコレステロールを取り除きます。LDLの中で特に粒子の小さいsmall dense LDLが特に悪い作用を起こすことがわかってきています。悪玉コレステロールが血管の内側に入り込むと、それを除去するために「活性酸素」が活発になり、その作用により酸化を受けて「酸化LDL」に変化します。それを処理するために白血球の一種である単球も内膜へと入り込み、マクロファージに変わります。

マクロファージは酸化LDLを取り込んで、やがて死んでいきます。この結果、内膜に含まれていたコレステロールや脂肪が、お粥のような柔らかい沈着物となってたまっていき、内膜はどんどん厚くなります。このようにしてできた血管のコブを「プラーク(粥腫)」と言います。「プラーク」ができた状態を粥状(アテローム)動脈硬化と言います。このとき善玉コレステロールを含むHDLはプラークからコレステロールを抜きとることで、動脈硬化を解消する方向に働きます。
プラークができると、血流が悪くなり、血管が少し収縮しただけで血流がとだえて、その血管により酸素や栄養が送られている心臓や脳に症状が起こります。
高血圧を放置する危険性
高血圧を放置していると、動脈硬化を促進し、脳卒中や心疾患、あるいは慢性腎臓病などの重大な病気に繋がります。
最近の研究から、脳卒中は男女問わず、高血圧の影響が大きいことが明確になっています。
- <脳卒中>
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脳梗塞・脳出血・くも幕下出血など
高血圧によって最もリスクが高くなるのが、脳卒中です。収縮期血圧(最高血圧)が10mmHg上昇すると、脳卒中のリスクが男性で約20%、女性で約15%高くなります。
脳卒中は命が助かっても、運動障害や言語障害が残りやすく、長期のリハビリが必要となることも少なくありません。
- <心疾患>
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心筋梗塞・狭心症など
高血圧は心疾患のリスクも高めます。特に、男性の場合は影響が大きく、収縮期血圧が10mmHg高くなると、心筋梗塞や狭心症の危険度が約15%も増加します。
- <慢性腎臓病>
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血圧が高いと腎臓にも大きな負担がかかり、血液中のナトリウムなどの排泄がうまくいかず、さらに血圧が上昇する悪循環を起こしやすくなります。慢性腎臓病を起こすと、脳卒中や心筋梗塞による死亡率が高くなることがわかっています。
高血圧の自覚症状
高血圧は頭痛・動悸・息切れ・耳鳴りなどの症状があるものの、自覚症状がハッキリとしないため、自覚症状による早期発見は難しい病気です。けれどもその一方で、簡単に発覚する病気でもあります。何故なら痛みなどの症状が出なかったとしても、定期的な健康診断や家庭での血圧測定によって数値として表れるからです。それが高血圧かどうかの指標になります。
「血圧が高め」とわかったら早めに受診し、治療を必要とする高血圧なのか、原因がどこにあるのかを知ることが大切です。
一般に血圧は、高齢になるほど高くなる傾向があります。
しかし、現代の日本では、30歳代、40歳代の比較的若い世代でも約半数の人が高血圧だとされています。しかもこの世代の場合、80~90%もの人が治療を受けていません。高血圧の状態を長期間放置していると、それだけ血管の傷みも進み、いきなり脳卒中や心筋梗塞を起こしかねません。一度傷んだ血管は修復が出来ません。
若い世代は薬に頼らずとも、食生活の改善など生活習慣を見直すことで血圧を下げることが出来るので、早めに受診して、医師の指導を受けるようにしましょう。
高血圧には「水素」を
高血圧を防ぐには、まずは生活習慣の改善が第一ですが、体内に余分な「活性酸素」を留めておかないことも大切です。速やかに活性酸素を除去することが出来る抗酸化物質として、今注目されているのが「水素」です。「水素」は分子が小さいため身体中に行き渡り、特に毒性の高い「悪玉活性酸素」を結びつくことで無害な水となります。

過酸化脂質が増えると血液はドロドロになり流れにくくなり、そうすると細胞の活動に必要な栄養・酸素が身体中に行き渡らなくなり、血管の柔軟性が失われて血管が脆くなります。「水素」には血液をサラサラにする効果もあるので、血管内の圧力を下がります。それにより、脳梗塞や心筋梗塞などの血管の病気を予防することが出来るのです。
特にストレスが蓄積すると一気に血圧が上昇して活性酸素が発生し、身体にダメージを与えます。なのでストレスが溜まってから「水素」を摂取するのではなく、日常的に「水素」取り入れる習慣を持つことが大切です。
「水素」を日常的に取り入れることで、血圧が正常値に近づいたり、症状が安定したという声も寄せられています。